――カノン君が部屋に来て、夜間通しての質疑応答を繰り返そうと思ったら疲れていたせいでそのまま眠ってしまったらしい。
先に帰ったらしいカノン君の置手紙を見て、また後日ということとなった。
そして今日は、レイに会いに行こうと思ったのに。
私が出てくるのを待ち構えるように、扉を開けた先には満面の笑顔。
すかさず扉を閉め、鍵をかけようとする。
だが、それよりも先に扉を開けられた。
「やぁアリス、奇遇だね。僕も今ちょうど通りかかったんだ!」
「最高峰のセキュリティーを誇るうちのマンションの最上階に、偶然通りかかるなんて奇遇ね。あぁでも大変!偶然なら正規の手続きを踏まえて入っていないということになるわ!管理人を呼ばないと…」
「やだな、偶然だって。ところでそんな可愛い格好をして、どこに行くつもりだい?」
「…だから、レイに会いに行くのよ。未来の旦那様だもの…心配でしょう」
私の服のリボンをつまみ上げ、得意げに鼻を鳴らすカノン。
これ以上一緒にいても、話の発展はしないと思った。
出口を塞ぐように私を見下ろすカノンを睨みながら、ドアノブに手をかける。
「うわ、つれないなぁ。昨日は君、あんなに泣いて可愛かったのに」
「…いい加減にして。そもそも何の用?話は後日っていったじゃない」
「でも、今日はアリスとおしゃべりをしたい気分なんだ」
「貴方ねぇ…」
いまだに食い下がるカノンに呆れながら、扉を開けて外に出た。
ガシャンという音が聞こえ、ロック完了という表示が出る。
カノンを無視して歩き始めれば、後ろからついてくる足音。
「ちょっと、人の恋路に首を突っ込むなんて野暮じゃない?」
「怒った顔も可愛いね。落ち込んだ君を元気付けてあげようと思ってさ」
ニッコリ笑顔のカノンに付き合いきれなくなり、走って逃げようとした。
だが、腕をつかまれて顔を思いっきり近づけられる。
「デートしようよ」
「……はい?」
素っ頓狂な自分の声が耳に入り、カノンの笑顔がやけに眩しかった。
