独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
「や、やめてよっ…人前でっ!早く立ち上がって…っもう、謝るから…ッ言い過ぎた事、謝るよッ!プログラムも…ッ入社テストとしてお願いするからッ!」

「あら残念」

「これにデータ入ってるから…ッ2日以内によろしく。あと…最後にッ私達の事、絶対に変な事件に巻き込まないでよ!!じゃあ、2日後!!」

「えぇ、また2日後」


ルカの愛用している小型記憶媒体を乱暴に放られ、今度は両手で受け止められた。

鞄を手繰り寄せるルカにわざとらしく手を振ると、強い瞳で睨み付けられる。

対人関係などつまらないと思っていた自分が、一方的に向けられた敵意に反抗してしまった。

大人気ないと反省するが、同時に今まで失っていた感情のパーツが埋められ心地よくもある。


 ――何度やっても、慣れないのよルカ。


レイが迎えに来てくれた後、膝をついて許しを請う私を抱きしめて叱ってくれた。

折り曲げられた指を丁寧に一本ずつ解放して、もう二度と絡まらないように彼の指が変わりに組まれた。

レイは唯一、私を許した。

膝を付くことを咎め、許しを請うことを叱り、私の罪を否定した。


 ――それに、そのうち退学の手続きが終わって嫌でも別れられるわよ。


砂を踏んだ膝を軽く払い、私も鞄を手に取り運転手の待つ場所へと歩み出す。

制服の赤と茶のチェックのスカートが風に揺れ、長い髪を抑えながら門を通り抜ける。

光沢のある濃いブラウンのブレザーと胸元を飾る赤いリボンとは、別れるのが少しだけ名残惜しい。

夕焼けに照らされた帰り道を、人に追い抜かれながら目的も無く歩き続けた。