――空が…綺麗ね。


艶やかな原色の新緑に包まれて、私は大空を見上げていた。

太陽が目に入るのを遮るように、誰かの肩口が私の視界を覆う。

強い日射だけを頼りに意識を保っていたけど、その光さえも奪われてしまった。

握りしめたエリカの花は、しな垂れて花弁を散らしている。

すり剥いて膝にも血が滲み鈍い痛みが走るけれど、その上から汗ばんだ手の平が置かれて焼かれるような新しい痛みも加わる。


『…空?』

『えぇ…綺麗ね』


汗と鉄の臭いが微かにする大きな手のひらは、空を眺める事さえ許してくれない。

視界を覆われた後、私の意識は途切れる。

そう、いつもそうだ。

ここで私の夢は途切れ、喉を掻き切られるような息苦しさが続いて、目が覚める。

今回も変わらず…自分の意思と反対に重たい瞼が開いてしまった。