独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
「――ローズ、オジサンから面会の許可が出たぞ。食べ終わったらこっちに来るんだ。服を用意してやるから…えぇっと、フロントスカラップジャンパースカートに…ミルクキャラメルのブラウスを合わせようかな。クリームカラーのミニハットに、リボンヒール。あとは…」

「ウィルぅ~ッ早くするのですっ!!白兎に会いに行くのですよぉ!」

「駄目だ。えぇと…髪も少しいじるか。右にまとめて毛先を遊ばせつつ、ヘアスプレーで…」

「けほっこふっ…うぅっウィル~早く行くのですッ!のんびりしてられないのですよぉッ!」

「わかったって。はい、おしまい。20分位で到着するから、お行儀よく車に乗るんだぞ」


小花の散った小さめのバックに、キャンディや玩具などの小物を詰め込んでローズに持たせる。

俺の服の袖を掴んで玄関へ引っ張るローズに連れられて、重たい家の扉を開けた。

車庫へと向かおうとすると、見慣れた女性の人影が二つ重なってこちらを見ている。

長い髪を結いあげ、菖蒲色の着物姿のリゼルと、同じく椿の花弁を惜しげも無く散りばめたシオン。


「…シオン、リゼル。二人揃って一体どうしたんだ?今日、約束か何か…」

「兄様、お久しゅうございます」

「あら、約束無しでは押し寄せてはいけないんですの?折角可愛い妹君がわざわざ出向いて来たと言うのに」

「リゼル、俺だってな用事ぐらいあるんだよ。それにシオン、この子は俺が今面倒を見ているんだ。事件に巻き込まれて、身寄りも無いし施設にも入れ難いから…俺が保護している」


シオンが近づく度に聞こえる草履の音は、どこまでも洗練されていて格式高い物だった。

隙を感じさせないほど優雅に振る舞い、丁寧に俺に向かってお辞儀した。

妹とは思えないほど緊迫した空気に耐えられず、ローズを紹介しようと手を引く。

赤い紅の引かれた口端を引き、ローズへと向き直ってまた丁寧にお辞儀するシオン。