「…兎…」
「え。なんだって?」
「白兎なのですっ…!生きていたのです、すごいのですっ!!ウィル、ウィル、どこに、何処に白兎は居ますかッ!?」
「何だってッ!でもこいつは…ッ」
ローズが興奮した口調で俺に詰め寄り、今にでも家を飛び出していきそうな勢いで声を荒げた。
先日の学園テロ主犯格と言われるノエル・ラヴィンソンを指差し、必死で俺の判断を待つローズ。
たしか、目に傷を負っていて感染症を併発し、ストークス管轄の病院に収容されていた筈だ。
生死の境を彷徨うほどの高熱が続いているらしく、面会や尋問さえも後回しになっていると言う話だ。
「…ウィル…ッお願いなのです、白兎に…会いたいのですッ」
「そ、うだな…。俺のオジサンが此処の病院長なんだよ。連絡して面会できるように掛けあってみる。ローズ、早く朝食を取って出かける準備をしよう」
「はいっ!ウィル、早く食べましょうッ」
「こら、落ち着くんだ。ナイフとフォークは最低限音を立てない。急いでいても、粗末な食事の取り方は許さないからな」
俺の言葉にぎこちなく両手を動かし、ゆっくりと食事を勧めるローズ。
テーブルマナー等、程遠い生活を送って来た筈の彼女は、不慣れな手つきながらも丁寧に器を扱う。
言い回しが変だが綺麗な上流階級の言葉を使いこなし、曇りの無い発音には目を見張るものがある。
やはり、普通のダストチルドレンとは違う存在だと言う事を、今更ながら思い改めてしまう。
