独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
『――…も、う…げんにっ…』

≪ドール、ヘリオドール。モルガが何か言っているよ?もしかしたら素敵な詩を思いついたんじゃないかな?≫

〔まぁ、それは素敵だわお兄様!ほら、大きな声で私たちに聞かせて!ほら、ほらほらほらぁああっ!!くきゃきゃっ!恥ずかしがらないでッ!〕

『…あん、たたち…ッ人の夢の中でぎゃあぎゃあ騒いでッ…!!うるさいから黙りなさいよッ!!』


双子達は私の声にわざとらしく驚き、転げて、二人で身を寄せ合って怯えている。

私に聞こえないようにコソコソ話をして、同時に何かを思いついたらしい。

ヘリオドールは被っていた黒いシルクハットを、マジシャンの様に種も仕掛けもありませんよ、と見せる。

テーブルの上にシルクハットを置き、私を観客から選ばれたゲストの様に恭しく扱う。


≪想像してごらん、そしたらきっと叶うよ。彼はこの帽子の中。ぐずぐずのシチューになったけど、君が望めばきっと叶う。ここは“そういう”世界だから≫

〔ステッキで叩けばウサギが飛び出すッ!くきゃきゃっほら、想像してみましょうッ!きっと彼は小さな小さな小人さんになって帽子の中にいます!ほら目を瞑って想像して!?間違ってキャンディがあふれ出してもきっと素敵っ!〕

『…想像すれば、叶う…そうよ。ここは私の夢だもの、ただの明晰夢なら…思い通りになるものっ!』

≪そうだよ、その調子ッ!ドール、ヘリオドールッぐずぐずのシチューが人の形になる為には、どんな素晴らしい魔法をかければいいんだいッ!?≫

〔くきゃきゃきゃっ!!きっと何百年も鍋をかき回した魔女でも難しいねッ!でもモルガなら出来るよッぐずぐずのシチューを人間にだって出来るッ!ひゃひゃっ!〕


私を挟むように肘をテーブルに付けて、お行儀悪く足をばたつかせる双子。

そんな二人に構わず、黒いシルクハットの中身だけを脳裏に描く。

黒いシルクハットの中には、ウサギでもなく、キャンディでもなく、ぐずぐずのシチューでもない“人”が入っているのだと。

不思議な薬を飲んで小さくなったレイは、大きな私に驚いて腰を抜かしてしまう。

そんな可愛らしい想像を楽しんでいた時、シルクハットから声が聞こえ始める。