「――遅いわ。レディを待たせるなんて、いい男が泣くわよ」
「男を泣かせた女がよく言う。今回アクセスできる場所はどこだ?前回、かなり深い部分まで到達したから解析も進んだだろう。今すぐにでも始めたい」
「そうね、前回は彼女のトラウマが後半暴走して強制遮断されてしまったようだし。あぁいうのは子供の頃では意味が分からないものだけれど、大人になると…キツいものね」
「まったく。ハーグリーヴスの駄目息子は悉く邪魔ばかりするな。アリスも私が不在の間に掻っ攫われたし、その間に面倒なことを吹き込んだ挙句アリスに発砲した。私を恨む気持ちは分かるが…いい加減人の恋路の邪魔をするのはやめてもらいたいものだ」
軍服の上着をエリザベスに押し付け、保護溶液の中で眠るアリスを覗く。
ほんの数時間前にカノンに発砲され、衝撃のあまりに意識を飛ばしたアリスに肝を冷やした。
握り返さない指、四方をだらしなく投げ出し、風穴の開いた脇腹からは夥しいほどの血液が溢れ出していた。
今ではその傷は綺麗に塞がり、赤黒く染まっていた体も爪の先まで丁寧に磨かれていた。
「貴方の口から、そんな薄ら寒い言葉を聞けるなんて世も末ね。濡れてまずい物は全て子の籠の中に入れて頂戴。体調の異常は無いようだし、常用している薬も無しと」
「嗚呼、この中に入るのはあまり気が進まないな。何というか、溺れる感覚が何度入っても慣れない。改善してくれ、エリザベス」
「固体に最低限の負荷が掛からないようにする為の保護溶液なのに。死にたいの?」
「…はぁ…ウィリアムもこんな女のどこに惚れたと言うんだ」
保護液の満たされた球体の中で膝を折り眠るアリス。
その機械からは無数の配線伸び、隣の同じ形状の機械へと繋がれていた。
脳に直接刺激を与え、夢を見るように映像を映し出す事を主に目的とした機械。
セラピーや精神治療で用いるそれを、新しく設計し直している。
