――まったく、これは遅めの反抗期というやつか?
ウィリアムの腕を胸に抱き、私が去るのを身を硬くして待ち続けているアンネローゼと目が合う。
ウィリアムの背により隠された口元は、私の足掻く姿を嘲笑っているのではないかという妄執に襲われる。
この恐怖が妄想だということを、その娘の胸倉をつかみ上げて今すぐにでも確認したい。
だがこの場だけは、彼らに背を向けて部屋を出る以外選択肢は無かった。
――ウィリアムがこの状況でこちら側につくとなると…やはり私の部下になったのは“彼女”の差し金か。
黒羊第二世代を作成するに当たって、アンネローゼだけはどの固体より特別で特殊だった。
第二世代以降の際、パンドラの人工知能の一角を、固体へ移行することに成功した。
パンドラ創設時から稼動していた人工知能プログラムにより、黒羊の飛躍的な能力向上を目的としたのだ。
パンドラシステム内にある彼女の知識を制御する場所に人工知能を植え付け、その他の固体にも同じ方法を用いろうとした後日、黒羊を管理していた施設が全焼した。
――アンネローゼはパンドラの“人工知能”と意識を“共有”することが可能であるから、厄介なんだよウィリアム。
私が生まれる遥か昔のパンドラ創設時に構築されたパンドラの人工知能プログラムは、人間が組み込んだ頃とは比べ物にはならないほど高度なものになっている。
パンドラのシステムの代償機能により、修復と再構築が繰り返された結果でもあった。
それはパンドラのシステム全体に言える事で、修復機能による数秒で何万という書き換えに対し人間側が対応できなくなっている。
パンドラのシステムがブラックボックス化し人間側から干渉できなくなったのも、プログラムが人間に使われることを嫌悪し、人間を使う側に回ろうとしているからなのかもしれない。
