独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
「思考を止めるな、脳が腐る。ストークス家も随分と衰退し過ぎた。人間は進化を忘れ、変化を恐れ不変を望んでしまっている。パンドラに革命を起さなければ、この国は海の藻屑になる。暗躍など常温で脳が腐った馬鹿共の戯言でしかない」

「…パンドラに革命を、って…一体何の話なんだ。今何がこの国で起こっているんだよ、それはローズにも関係していることなのか!?」

「パンドラ四代名家の中で、唯一暴力で財を成したストークス。しかし過激派も沈静され、人間がパンドラのシステムによって管理されたこの国では衰退していく一方だろう。ブランシュ家も同じだ。ハーグリーヴスが所有するパンドラのシステムに投資する資金を掻き集めるだけしか能がない。ハーグリーヴスも…国を捨て、国民を捨て、我が身可愛さに国民を見殺しにするつもりだ。この国も、パンドラから始まり…パンドラにより大量虐殺の運命を辿っている」

「おいおい…っ話が見えないぞ!?まさか最近のパンドラの誤作動も関係しているのか!?お前は一体何と戦ってるんだよッ!!」


 ――戦ってなど居ないんだよ、ウィリアム。


相手は世界最先端の管理プログラムであり、国の名前を許されたパンドラ。

四季を彩るのも、雨を降らせるのも、空気を正常化するのも、重力を操るのも。

全てパンドラのシステムが一任し、屈指のセキュリティを未だかつて破った人間は存在しなかった。

そんなもの相手に、“戦える訳が無い”から、戦える人間を細胞レベルからしか作り出す以外方法が無かった。


「戦いに備えてお前にも役をやろう。三月兎と眠りネズミと帽子屋でお茶会とはなんて愉快なんだ。やっとチェス盤の穴が埋まる所でね。駒が揃えてゲームをするにはまだ早い。私も残念ながらその内の一つだから、プレイヤーに命を預けるしかない。プレイヤーは私の眠り姫。…おっと、迎えに行く時間だな」

「眠り姫って言うのアリスの事だろ。ローズにも会わせてやってくれ」

「では、いずれアリスを交えてお茶会を開こう。その日を楽しみにしているよ、“三月兎”」

「そのときはマシュマロ入りロイヤルミルクティを淹れてやるよ“帽子屋”。木苺のジャムたっぷりのスコーンも一緒にな」