独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
「オメデタイ奴だ。予定調和の運命を自ら選ぶとは…さすがだウィリアム。しかし素直に教えた所では面白くないからな。ヒントをやろう。後は自力で調べろ」

「俺はローズを守るんだよ…どれだけの物を見ようと、俺はローズの約束を守るんだよっ!!」

「ほう。ならば語ろう。お前の父親が当主になったのも、お前がシオンと出会ったのも。お前が継承権を放棄したのも全て…アンネローゼが元凶だ。調べている間に先日の事件も明るみに出てくる」

「お、まえが…語っている物に偽りは無いんだな?」

「真実を求めれば、私の言葉に嘘偽りの無い事が証明される」


腕を抱えるアンネローゼを振り払い、ウィリアムも解放してやる。

転げたアンネローゼを庇うように抱きよせ、いつになく色を含んだ目で睨みつけてきた。

不愉快なほど赤く滲んだ血色の瞳は、以前とは変わって炎が燃え立つように見える。

死んだ魚だと高を括っていたのだが、まな板に置いた途端に息を吹き返した。


「…おっと、私は明日から数日休暇をとる。詳しい話はまた後日。それまで、せいぜいネズミに噛み付かれないようにな」

「また休暇かよ…シャーナス総層取締役は忙しいんだな。軍職に執着し続ける理由は、隙あらばストークスの寝首を掻こうというつもりかよ」

「まったくストークス本家筋の人間が知らないとは情けない。私はシャーナス家の意図ではなく、ストークス本家から“強いられて”軍属に就いているというのに」

「でも兄さん達はお前が裏で暗躍する為にだと…違うのか」


ウィリアムは俗に言うエリートだけが編入を許される軍士官学校を卒業している。

正式に軍人として配属された先が私の直属の部署で、当時としてはシャーナス家の下で働くことに酷く嫌悪感を感じていたようだ。

しかし同時に、正式なシャーナス家嫡男を足蹴りにして、現当主に成り上がった男に恐怖していたのだろう。

私の入軍当時は軍内の風当たりが悪い事を利用し、自らが台風になって周りを巻き込みながら侵食し、過ぎ去った後に根を下ろし開拓していった。

事実、台風の目の中で胡坐をかきながら、ストークスの人間を差し置いて異例のスピードで昇格していった。