「――馬鹿じゃないのか?」
「…黙れ…話したぞ。ローズの事…教えろよ」
「馬鹿でないのなら愚か者だ。お前の立場をストークス中の人間が欲していたはずだ。それを、どこの馬の骨とも分からぬ女に明け渡すなど…呆れてものが言えない。だが本当に皮肉だ、あの紫苑をお前が見つけるとは…」
「この件に関して俺は一切の意見を拒絶する。先日の事件…ローズは関わっているのか」
私を睨みつけるウィリアムに、肩を竦めて視線をアンネローゼへと向けた。
“以前保護していた”時より血色がよく、飼い主の躾が良いらしく大人しく耳を塞がれている。
可愛らしい洋服を身に纏い、虚弱な小動物を演じる姿は見事としか言いようがない。
それを無意識で演じているアンネローゼに、賞賛の拍手を贈りたいほどだ。
「そうだな。私達は総称して彼らを黒羊と呼ぶ。彼らは特殊な生命体。常人には理解できない知識を所有し、人為的に編集し格納する事が可能だ。アンネローゼが起こした先日の事件も、彼女が危険回避を行った末の結果。これで納得したか?」
「特殊な、生命体…?なんだよ、それ…全く説明になってないじゃないか!俺がどんな思いで話したと――ッ」
「説明できない理由は二つある。アンネローゼの事件に関して語るとなると、黒羊についても説明しないといけない。後者に関してはお前はまったくの部外者だ。介入して欲しいとも思っていないが…な」
「黒羊だか何だか知らないがッ…俺も生半可な覚悟で此処にいるわけじゃないッ!!ローズを白兎とアリスに会わせるって約束したんだよッ!!だからッ…序列第4位のシャーナス家の分際でッ…序列第2位のウィリアム・ストークスに意見するなぁああっ!!」
アンネローゼの両耳を塞いでいた拳を振り上げて、私に詰め寄ってくるウィリアム。
男に言い寄られても嬉しい筈が無く、組み敷かれるのは問題なので脛に靴の先端をくれてやる。
唸り声を上げて膝をつくウィリアムの前髪を根本から掴みあげ、苦痛に喘ぐ表情を楽しむ。
アンネローゼが泣き叫びながら、ウィリアムを助けようと私の腕にしがみ付いてきた。
