独:Der Alte würfelt nicht.



『…の…ッ人の子の分際で…ッ私を騙しよって!!我が息子よ、コイツをつまみ出せ!!二度と私の目に触れないように、徹底的に処罰するのだッ!!』

『シ、シオンッ!!謝れ、ほら早くッ!!すみません、怒りを鎮めてください父さん!出来心なんだ、俺が後できつく言っておくから…ッ!!殴らないでくれ、お願いだ父さんッ!!』

『黙れ息子よ!!お前もこやつと同じくつまみ出されたいかッ!!鳥を蝶と偽りおって…ッこの罪、首を差し出す以外許されぬ!!』

『殺さないでくれッ鳥ならいくらでも俺が折るから…ッシオンを殴るのは止めてくれよぉおおっ…!』


暴力的な腕が何度も振り上げられ、容赦なく細い体にぶつけられた。

白い体に赤い斑点が広がり、頭を庇うシオンは低い声を上げて唸る。

息を切らした父さんはシオンの腹を踏みつけにし、乱れた着物の襟元を正した。

蹴り飛ばされたシオンを起き上がらせようと支えるが、俺を振り払って這いつくばる。


『…私が嘯いたと…。愚かな、それが…蝶に見えて…?』

『これ…は…鳥?嗚呼、鳥だッ!なんて愉快だ!!やりおったな人の子よッ!!見事に出しぬかれた、久しいよこんな感情はッ!名前は何と申す?その名…しかとこの胸に刻もう』

『シオン・リジイアと申します。本日は蟲籠蓮苑当主にお目通りしたく参上しました。先ほどの無礼、心からお詫びいたします』

『良い許す。さて、余興はさておき…我が息子よ、続きを話せ。下らない内容なら…切って捨てる』


シオンが丁寧に折り込んだ千代紙を裏返し、感嘆の声を上げる父さん。

柄の見えているこちら側からは蝶にしか見えないが…裏の白い面には鳥が折り込まれているらしい。

そう言えばシオンが父さんに回答を求めた後、塞いでいた手の平を裏返した事を思いだす。

もし甲の面を裏返さなければ、そこには白い鳥が現れたのだろう。

下手をすれば命の危険があるお遊びに肝を冷やしたが、父さんがシオンに好意を持ったのは好都合だった。