「そして…白兎とのお別れの日が来たのです。帽子屋が…迎えに来ました。白兎は止めようと詰め寄って…帽子屋の気が済むまで蹴られました。止めて欲しいとローズが言うと…口を開く回数分だけ殴られました。白兎はローズに言いました『次にみんな揃った時はお茶会の続きをしよう』と。だからローズは…白兎を探して、追いかけて…此処まで来たのです」
「な、ら…俺を頼れよ!!始めに言ったろ!?白兎も探す、アリスを探すのも手伝うって!!どうしてお前がその可能性を潰すんだよ!?俺はお前にとって…ただの保護者でしか無かったのか…?」
「ローズは…怖いのです。ウィルの事も本当は怖い。笑いながら…どうして人はローズ達にあんな痛みを与える事が出来るのでしょうか?どうしてパン買って来てくれたのに目の前で踏み潰せるのでしょうか?その理由をローズは知りません、知りたくも無いのです。知ったらきっと白兎に嫌われてしまう。白兎は…きっとそんな“私”望みません」
「――んだよ…それって…俺が怖い?あんなに無警戒だったじゃないか、何処でそんな素振りを見せたんだよ…分かるかよ、んなの…」
ローズは俺を始めから…信用なんてしてなかったんじゃないのか…?
初めて垣間見た世界はあまりに汚く…彼女の中で生まれた“人間への恐怖”は計り知れない。
恐怖から身を呈して守り続けてきた白兎を欲するのは、未だに彼女が“恐怖”を感じている証拠。
俺が“甘い顔をして近づいて最後には笑いながら恐怖に付き落とす”と…心の隅で疑っているから…こうも拒絶するのだろう。
「兎は…追いかけるものなのですよ。今まで本当にありがとうなのです。だから…お願いなのです“まだ”優しくて暖かい人で居てください。せめて今この場だけでも…ローズにとっての“いい人”を演じてください」
「お前は…ずっと俺の事、そんな風に思っていたのか。自分に好意を向ける相手は全て…ウソツキだって」
「もう…蹴られて疼く眠れない夜も熱に魘される日も…いらないのですよ。ウィル、さようなら。此処で…お別れなのです」
