「――痛ッ…ローズ、俺だ。ウィリアムだよ、怖がらなくていい、右腕の方外すからな」
「…う、あ…ッ…う…」
「待ってくれよ、すぐに…すぐに外すから!!」
『おいおい、ストークスさん困るんだけど。――ん、なんだよエリザ…いいのか?…お前がそう言うなら…まぁいいか』
解放されたローズの左手が、俺の背中に食い込んで自分と同じ苦痛を味合わせようと這い回った。
軍服を着ていなかったら、と思うほどの力で掻き毟るローズに…自分自身が情けなくなる。
右手の拘束を外すことができ、最後はローズが被っている異質な面だけになった。
よく見ると後ろ側で安易に固定されており、結び目を解くだけで拘束から解放する事が出来た。
――誰が指示したんだ!エリザが…こんな事するわけ…ッ!!
カランと、面が床に落ちる軽い音に目を奪われ、その異質な形状に俺は身を震わせた。
視界を保つための穴も無く、面には本来あるべき筈の無い…横に厚さを持った長い“鉄の舌”。
強制的に呼吸をさせられるだけでも苦痛の筈なのに…その“鉄の舌”は喉を直接付くように設計されている。
面に滴る唾液の線は、どれだけの時間彼女が拘束され苦痛に喘いでいたか…当事者でない俺でも嫌というほど分かった。
「――げほっ…かふっ…ううぅ…ぐ…う…ッ」
「ローズ、大丈夫か…ゆっくり息を吸うんだ。…クソ、唾液を出し過ぎて声が出ないのか。ジェイル!!水分を持ってこい!!早くッ!!」
「…やっ…ぁ…ウィ…う、こふっ…ゴホッ、ううぅ…」
「クソッどうすれば…どうすればいいんだよッ…!おい、早く…ジェイル!!水持ってこい!!」
管理室から離れたのか、それとも俺が焦るのを楽しんでいるのか…どちらか考える暇なんて無かった。
唾液が面の枠端に溜まっているのを見つけたローズは、躊躇いも無くそれに手を伸ばす。
自分を苦痛に追い込んでいた元凶にすら縋る彼女は、目の色を変えて喉の渇きを潤した。
吐きだした唾液を啜るローズを掻き抱いて、大きく息を吸い…幼い唇から覗かせる赤い舌ごと塞ぐ。
