「――着いたぞ。入る前にこの部屋の説明をしておく。彼女への処遇に関して、一切意見を俺達は聞き入れない」
「…わかった。ローズが無事ならそれでもいいんだ」
「ほら、入んな。用が済んだら部屋の右端に電話があるから掛けてくれ。俺は管理室で映像を見ているから。じゃ」
「手間取らせたな。後は一人でいい、助かったよ」
背中を向けて俺に手を振るジェイルを見送り、部屋の開閉ボタンにそっと触れた。
既にロックは解除されており、静かな音を立ててゆっくりとスライドする。
飛び込んできた光景は、俺の脳には理解しがたいほど…不鮮明に目に映った。
それは…人間に対する処遇と言うよりも、人より数倍劣った生物を扱う設備に見えた。
――んだよ…何だよこれッ…人間だろ、ただの…女の子だろ!?ど、うして…こんな…酷いことを平然と出来て…ッエリザも、ジェイルもあんなに…あんなに――ッ!!
鑑賞者と“展示物”を分ける、人の手で破れるはずの無い厚い壁。
舌を噛まないようにとの配慮なのか、人間としての発言の権利を奪う悪意的なものなのか。
鼠の面から滴るのは、唾液か、汗か、涙が見当もつかない。
だが、苦しそうに息を吸い続けているのがガラス越しでも伝わる。
ベルトで壁に両腕を高い位置で束縛されているせいか、白く細い腕から健康的な血色は失われていた。
「――開けろ…ッ此処を開けろッジェイル!!ローズ、ローズッ!!俺だ、聞こえるか!?ウィルだよ!!お前を迎えに来たんだ、大丈夫か!?ローズ、ローズ!!」
『開けてもいいが安全の保証はしないぜ?噛みつかれてから俺を責めても、同情しないからな』
「いいから開けろよ!!早くッ!!」
『はいはい』
欠伸でも聞こえてきそうな返事だったが、電話の近くにある唯一の出入り口の扉が開く。
開き切る前に滑り込み、ローズの束縛を解放しようとベルトに手をかけた。
思いのほか手間取ってしまい、痛みに震え低く唸る声に更に焦ってしまう。
一つの拘束が外れた時、紅葉のような小さな手は、俺に対して敵意をむき出しにした。
