「――軍直轄…いえ、クローバーの第十六研究所へようこそ。ウィリアム・ストークス」
「何だよこれ…研究施設!?クローバーって事はシャーナス家の研究機関だろ、どうして…ストークスの病棟内だろ!?そりゃあここは館が離れているからって…」
「ストークス上部から許可はとっているわ。知る手段ぐらいいくらでもあるでしょう。…あまり自分の家の内情に関心が無いのは…頂けないわね」
「俺はストークスのお家騒動がウンザリなんだよ。それで、シャーナスの人間が一体此処で何の研究をしているんだ?わざわざ手の内を晒すようなものだろう、何のメリットがあるんだ」
研究施設とは思えない洗練されたデザインを全面に醸し出した美しい空間。
ふと、薬品の臭いをかき消すような匂いに“先日の事”を思い出し口元を押さえた。
敏感になっている嗅覚は、その匂いを一瞬で嗅ぎあててしまった。
両腕や顔に引っ掻き傷、褐色の肌の皮の剥がれた頬はみるも無残に血を流している。
「相当手こずったみたいね、ジェイル。お客さんよ、ストークスの御子息だから丁重にね。ローズちゃんの様子は?あまりに騒ぐなら“危ない”から鎮静剤の投与を許可するわ」
「打った後に許可をもらっても遅ェよ、Lv.3に上がる直前だったしな。あの嬢ちゃん、薬を打ってからも暴れるわ泣き喚くわ、可愛げの無いお子様だよ。親の顔が見てみたいね――で?ストークスの坊っちゃんが此処に何しに来てんだよ」
「乱暴な言葉遣いはよして。今、ローズちゃん落ち着いている?彼が面会を希望しているの。あまり暴れる様だったらガラス越しに話だけでもさせてあげたくて」
「話かぁ…難しいだろうな…ウサギウサギって馬鹿の一つ覚えみたいに喚いてやがったぜ。今はおとなしいから、そちらさんが良いって言うなら案内するぜ」
ティッシュで顔から出た血を拭きながら、同時に手早く消毒も済ませているらしい。
褐色の肌に奇抜な染色を施したオレンジ色の髪の毛、耳には金のピアスが所狭しと通されている。
数多くのロックを解除していくのを、ジェイルの背を追いながら呆気にとられていた。
その行く先々に名前の書かれたプレートが掛けられ、異質さは部屋の外でも感じ取れた。
