独:Der Alte würfelt nicht.



「――さっきからッぎゃあぎゃあッうっせぇんだよ、クソ女っ!ったく何年たっても、ブスはブスのままだなぁ。使えない、脳なしのアリスがよくもここまで生きてこれたなッ」

「…ううっひっ…ううっ知らない…ッ貴方なんて知らないッ!!どうしてっ…そんなに酷いこと言うの!?私の所為で…ッみんな、また…ッ死んで――ッ」

「俺はノエル・ラヴィンソン!泣くな!黙れッ良いから、俺の話を聞けッ!おい、アリスッ!!」

「私がッ…みんな殺したッ!!私が、学校の皆を殺して…ッそしてキャロルさんも…!!」


メインルームを訪れた人間は突入してきた軍人ではなく…ボロボロの青年。

ウサギの様な真紅の瞳、包帯で巻かれた右目にもその色が広がっているのだろうか。

柔らかそうな銀色にも輝くミルクの髪は、ボサボサで不清潔だ。

会ったことなど無いのに、以前レイと深い夢に堕ちた時に…とても似た双子にあった気がする。

名前は…えぇと…思い出せない…たしか――。


「死んでッねぇよっ!誰か止めたんだろ!?こんのブスっ!お前が誰を殺したっていうんだよッ!!」

「う…嘘ッ…みんな、生きて…ッ!!」

「いいかっ俺たちはお前に伝える為に施設から出て来たんだッ!!泥水を飲んで、死ぬほど蹴られてもお前に会うために生きてきたッ!!だから耳の穴かっぽじって良く聞けよッッ!!」

「なに…ッよ、人の事さっきからブスって!!何が言いたいのよッ…どうせまた…私を罠にはめようと思って何を嘯く気…!?カノン君みたいに…私の事、騙すんでしょう!?」


 ――どうして、カノン君の名前が…此処で出るの…。


レイにマークの人間を監視してほしいと言われたのに…カノン君の傍に居続けたことを悔やむ。

彼の口車に乗せられて、レイの事を疑ってしまった自分を恥じることしかできない。

疑念という種を植え付けたのはカノン君なのに…どうして傍に居続けるのだろう。

それは簡単、カノン君の傍に居ると――心が軽くなるから。

彼は…人が見えないから…淡白な関係でも、見えないから嫌われない。

きっと私の瞳の色も覚えていない、そんな彼に…心から安堵して、レイの傍に居る時以上に安らいだのも事実だ。