独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
 ――それにしても…ストークス直属の医療機関で治療していたのに…いつ誘拐されたのかなぁ…?


お腹に居た女の子の代わりに…“あんなもの”埋められて…一番の被害者。

シャーナスさんが入手した情報によれば、妊婦の子宮に居たのは“女の子”。

でも、何かの理由で病院から連れ出され…女の子を摘出され、“あんなもの”を詰められた。

それによってシャーナス将軍から教えてもらった回答は不正解、答えは“男の子”だった。


 ――でも、女の子に細菌を持ってろなんて…物騒な男。取扱い方法とか分からないのに、下手して割れば…私がテロリストじゃ…な…ッッ!!


原色で元の絵すら分からないパズルのピースが、あるべき場所を求めてはめ込まれていく。

今更この事実を確認しようにも、軍人の足音が近づくのが聞こえてきた。

まずい…ッ駄目、入ってこないでッ逃げないとッ!!

自ら起こした究極の間違えに気付いたのは、軍人が個室の扉を開けて私を“確保”しようと手を伸ばされた時だ。


「――ルカ・ベルチット。君を第一級サイバーテロの容疑で拘束する。抵抗するならここで射殺する。メインサーバーへの不正アクセス、監視カメラの映像の捏造。君の端末を調べさせてもらう」

「は、離して!!助けて、違うッ!!私は、私は何もやっていない!!皆、助けたじゃない!!どうして、何でよぉおおおッッ!!!くそおおっッ騙されたッ!!私は違うッ!!違う違うッ違ぅうううッ!!!うわぁああッ!!!」

「投票に使った管理プログラムを確認。それ以外に…ハッキングツールと思われるプログラムを使用した履歴を確認。本部に送ります、シャーナス将軍許可を」

『ああ、送ってくれ。ハードディスクの中身全てだ。詐欺容疑で警察にも回すからな、証拠品全て押収しろ。嗚呼…自殺なんてヘマさせないように気をつけろよ、ユーリ』


五臓六腑に溜まった激情が言葉にならない叫びを挙げ、醜く身を振り乱して抵抗した。

首に鋭い痛みが走り、腕を振り上げて逃げようとすれば惨めに床に転げる。

グキリと腕が曲がってはいけない方向に腕が曲がり、鈍い痛みが私の意識を少しだけ覚醒させた。

銀の髪を持つ軍人に見守られ、血が出るほど噛んだ唇はもう力が入らなかった。