『――ご活躍だったようだね、お嬢さん。私の出る幕は無かったようだ。私にとって最良の結果だった。礼を言うよ』
「…そっちでも弄れた癖に、高みの見物だったし。テロリストが仕掛けた細菌が手元にまだあるの。私達、此処から離れるから、そっちで回収してくれない?」
『君が持っていてくれ、保護する際に回収する。あと証拠品だから扱いには注意しなさい。両手でしっかり握って落とさないように。こちらは準備が整った、死にたくなければ早く教室に戻ることだな』
「お礼なんていらない。だから早くシオンを…シオン・ラトゥールを助けて!テロリストにメインルームから連れていかれて…消息がつかめないの!」
『紫苑?ああ…上手く逃げ伸びてるよ。先ほど悔しそうに正門から逃げて来たのを軍が保護している。まったく、危ないお遊びをしてくれたものだよ。テロリズムはスリルを味わうための物でないと、君からも説教をしておいてくれ。では、礼はまた後日改めて。私は忙しい、切るぞ』
接続が切断される音と、私の緊張の糸が切れるのはほぼ同時だった。
テロリストのトラップを見破った事による高揚より、シオンが無事だった事に安堵する。
崩れて眠ってしまいたかったけど、軍の殲滅対象になりそうなので体を奮い立たせた。
試験管を落として割らないように注意しながら、散らかした物を片付ける。
「貴方、逃げた方がいいんじゃない?部外者でしょ、疑われるよ。あと、貴方のアリバイなんて絶ッ対証言してあげないんだからね」
「わお、怖い。僕だって長居はしないさ。絶対に、ね」
「…うん。なら、ここで。もう二度とォ、再会しなぁいこと…祈ってるからァ。ばぁいばぁ~いッ」
「あはは、僕は行くね。ありがとうルカちゃん。僕、すごく助かったよ。君に感謝してる、心から。じゃあ…元気で、ルカちゃん。本当に、アリガトウ」
ヒラヒラと手を振り、私に背を向けて視聴覚室から出て行ったカノン。
あっさりとした別れに呆れながら、手早く広げた物を鞄につめて端末の電源を切る。
あれほど望んでいた無音の空間が恐ろしくなりにブルッと身を震わせた。
