独:Der Alte würfelt nicht.

 
 
「――危なかったァア…ッ!!やっぱり保険掛けておいて正解!狙い通りスプリンクラーを使って来たね、このテロリスト。まぁ…一筋縄じゃいかないと思ったし…危ないトコだった!」

「ルカちゃん、お手柄だね。僕もさ、どうしようかと思っちゃった。ほら、全員不正解だろ?この読みが外れてたりしたら…怖いな。後これ、戦利品。持ってるの怖いから、君にあげる」

「ありがと。って…怖いからって服の袖で持つほうが危ないでしょ。貸して、それは私から軍に提出するから。細菌テロなんてキツイなぁ、せいぜい水溶性の毒薬使うと思ったのに。後は軍の突入を待つだけだね」

「そうだね。僕もヒヤヒヤしたよ。まさか回答が不正解だったなんて。まったく、悪趣味だね…あんな回答、結局アリスにしか分からないじゃないか」


これは賭け、テロリスト側への大博打。

もしテロリストがスプリンクラーでの大量殺人をせず、爆弾か何かで教室を爆破したのなら…私達もただでは済まなかっただろう。

カノンに行って貰ったのは地下の貯水タンク。

中身は水ではない揮発性の高い液体、その中に毒か何かが仕込まれていると予想した。


「災害管理システムに命令が行くと、細菌入りの試験管がタンクに落ちる仕掛けだったよ。その中身がスプリンクラーと共に噴射して、全員お陀仏になる予定だったみたいだけど。あえなく失敗だね」

「うん。アリスが正解だった場合はオートロックを解除して、正解した人間だけを解放する。その後、教室を密室状態にして、不正解だった人間を教室の中で虐殺する寸法だったみたい。でも殺人兵器となるスプリンクラーさえ無力化すれば…こっちの物だもの!」

「それにしてもさ、アリス…泣いちゃった。生まれたての赤ちゃんみたいに真っ赤だ。可哀そうに」

「うわ…可哀そうにって白々しいにもほどがあるよぉ…。まぁ…たしかに、ちょっとだけ、同情する」


画面には未だに息絶えた妊婦の膝に頬を寄せ、嗚咽を繰り返すアリスがいた。

痛々しい程に泣き崩れ、自らの行動に懺悔し…無力さを嘆いていた。

あまりの悲惨な光景に目を瞑り、アリスの婚約者さんに連絡を取る。

数回のコールの後、憂鬱で不機嫌な声が接続先から聞こえた。