「…私…ママに…なりたかったの…ずっと前から…治療、を…受け…て18年前にね…卵子を…移植、す…る…ことが、決ま…って…でもその子…此処に…入らずに…居なくなっちゃった。きっと…それは貴方ね…だから…もう、“いいの”よ」
「…キャ、ロルさん…ッお、お…母さん、おかあさん…ッ!!だめ、おねがい…やめて!!これがおわったら、わたしのはなし…いっぱい…きいてほしかったのに…ッ!」
「私の…私の可愛い…アリス。時を越えて…会いに…来て、くれたのね…嬉しいわ…だからいいのよ。泣かないで…私の、大切な…娘…」
「…い…イヤぁあ…ッ…おかぁ…さ…ッ」
時を刻む電子音は、私を狂気に落とす地獄からの怨嗟の声。
此処は地獄、怨念が渦巻く業火に焼かれ血に狂い業火に焼かれる場。
私の我儘の代償として鬼となり、赤の生を諦めた彼女にもう息は無かった。
自らの赤子を、自らの手で…温かで安全な羊水から引きずり出すように仕向けたのは私。
地獄の業火に焼かれた岩盤の上で、死ぬことも許されず踊り続けるのは私の苦役。
――これも全部…私のせい…ぜんぶ…わたしが…。
滴るほどに浸かった袖で、涙を拭うと…私の顔を朱で真っ赤に濡らした。
人が映るほどに磨かれたメインルームの壁に、自分の姿が映る。
今しがたこの世に生を受けた赤子のようだったが、産声を上げる事も無く佇んでいた。
深く突き立てられた刃物を、指を折り込むようにして握り込み…容赦なく引き下ろした。
――おわったら…いっしょのとこ…いこうね。
同じ動作を繰り返して、“邪魔”なものを横に退けながら4回目の刃を入れた。
溢れ出てきたものは、本来透明の筈の羊水とはかけ離れたオレンジ色をしたもの。
他にも…あの双子が歌った“男の子”を作る材料が、私の膝に傾れ込んできた。
人影が見え中に手を伸ばすと、不格好な“男の子”のぬいぐるみが私を見ていた。
不正解に喚起するテロリストの声、聞こえるはずの無い投票者達の叫び。
まだ熱を持った膝に抱かれて、永遠の夢を見続けることだけを願った。
