独:Der Alte würfelt nicht.



「――よし、やっと切り離せたッ!」

「下手に動いて大丈夫かい?アリスが僕らに助けを求めた事はテロリスト側に知られてる可能性がある。逆手に取られて下手に人数を合わせれば余計に…危険じゃないかな」

「平気、大丈夫。それに操作しなくたって“女の子”に今、票が集まってる。リアルタイムでの投票が仇になったのかもだけど、やっぱり国屈指の進学校。皆無駄がなくて感服ダヨ」

「確かにえげつない、か。【投票者】からすればさ、さっさと腹を切り裂いて中身を取り出せって気分だろうね。でも本人からすれば、そんな事やりたくないわけで…」


ルカちゃんの後方から画面を覗くと、アリスはまるで本当の母親に甘えるように、膝に体を預けてうつ伏せになっていた。

金糸の絹の様な髪を緩く編みながら、自らの子を慈しむように柔らかくほほ笑む。

その姿にしびれを切らした【投票者】達は、回答を片側に寄せてその意思をアリスに訴えているようだった。

片側によれば寄るほど、アリスの“確認”を待ち続ける【投票者】の憎悪すら伝わってきそうだ。


「アリスも馬鹿だな。自分が命を天秤にかけているくせに、重さを測れないでいる。約3000人の命か、一人の妊婦とグラム単位でしか測れない単細胞を天秤にかける事自体間違ってるんだよ」

「私もねェ…そうだとは思うんだけど。この行為自体チートだもんね、私だってさぁ…シオンが捕まってなかったら、アリスのサポートなんかしないし…何より、もう逃げちゃってるもん」

「ルカちゃん。もうさ、“アリスの判断に任せる”っていうのは、どう?それはそれで面白い展開になりそうだし…テロリスト側の望む結果にしてあげないと、更に事が悪化しそうな気がするよ」

「…気づいてたけど。性格悪いね。仮にも好きだと豪語するならさぁ…少し位助けてあげようって気にはならないわけぇ…?」


あからさまに眉寄せ、信じられないと言うように首を振るルカちゃん。

もともとそんなに可愛くも無いのに、5割増しほど不細工な顔を見せる彼女。

その眉と眉の間を伸ばしてあげようと、手を伸ばせば、それよりも早くビンタが飛んでくる。

寸前の所でかわし、その腕を羽交い絞めにして顔を近づけてみた。