「――やぁ、薔薇の剪定ははかどっているか?今が最盛期だから、見に行ってやろう。ハーグリーヴスの内庭は…“手入れが行き届いていて有名”だからな。アリスもその際には連れてきてやろう。きっと“驚く”からな」
『いいよ、来週末にでもハーグリーヴス本家にご招待しようか。その際には、アリスは置いていってもらうよ。本来なら、彼女は僕の所に来るべきだしね。彼女の好きなダージリンを用意しようかな』
「嗚呼、駄目だ。来週末には予定が入っている。その日はアリスにプロポーズするんだ。そろそろアリスから手を引きなさい、見苦しいぞ」
『うわ、かなーり…必死だね。まぁ、早くアリスを捕まえとかないと僕に取られちゃうもんね。――まぁ本音は他の所にありそうな気もするけど…さ』
襟を掴まれ捲し立てられた頃が懐かしく思うほど、落ち付いた返答に苦笑した。
マークの人間から干渉されないようにアリスを匿っていたが、もう限界らしい。
所詮は序列第4位のシャーナス家の当主であっても…第1位のハーグリーヴス本家から圧力があっては手が出せない。
話ではハーグリーヴス本家から“ハートのジャック”の替え玉を出すという話を切り出されたと言うのに、本人が出てきてしまえば本末転倒だ。
「ハーグリーヴス本家から疎まれる存在の癖に…起死回生を狙う気かは知らないが――アリスを利用するな。他のマークの人間に潰される前に、手を引け」
『それは出来ないな。だって僕さ、これでも…アリスの事、結構気に入ってるんだよ?綺麗な顔の造りしてるし、性格だって許せる範囲。これから躾ければいいだけだしさ、問題点は少ないんだ。紅茶も僕と飲んだ方がきっと美味く感じると思うよ』
「…やはり…お前にはアリスを任せられないな。以上だ、切るぞ」
『僕もお願いするよ。でもさ…新妻を味見するのも、また新鮮だよね』
下品な笑い声が、イヤフォンから流れ出てくると同時に地面に叩きつけた。
ぐしゃりと、音を立てて形を変形させた金属の塊だけでは、煮えたぎる腸を冷やしきれない。
酷い頭痛、頭が割られる激痛、目が霞んで眩暈が止まらなくなって来た。
とっさに額に手をつき、頭を抱え込んだせいで、リゼルの耳障りな甲高い声で更に重くなる。
