「アリスは確か…“おいしくなくなる”って回答だったわね。あれは傑作。腹抱えて笑わせてもらったわ、ある意味大正解よ。花丸付けてあげたくなっちゃった」

「もー…またメインサーバーに入り込んで人の試験の答案みたわけ?その内ヘマして捕まるわよ、ネットワークの不法侵入は重罪だわ」

「わお。“ご本人”に言われちゃおしまいね。ルカはそんなヘマしないし…って。ルカは?一緒じゃないの?」

「え、と…怒らせちゃって。許してもらえそうにないみたい」


 ――これだけの騒動になっていながら、ルカのように私を拒絶しないシオンは肝が据わっているというか変わり者だ。

極度の快楽主義者になると、自分に実害がない限りはどんな事でも容認できるらしい。

プラス思考と言えば聞こえはいいが、彼女の場合、自分に実害がなく、周りの人間が不幸になればなるほど興奮するそうだ。

傷口に塩だけでなく、その上からソースをトッピングしてしまいそうな、ユーモアたっぷりのシオン。


ニヤニヤと口元を三日月のように伸ばし、今後、私とルカの関係がギスギスするのを、想像して楽しんでいるらしい。


「――とりあえず、私は今から管理室に向かうわ。いつまでもカメラで監視されるのも癪だしね。銃も二丁あるし、ちょっとだけ怖いけど行ってくる」

「楽しそう、映画の世界みたいでわくわくドキドキね!私が危なくなったら、“私が元天才科学者です”ってカミングアウトしてね??まだ死にたくないし、痛いのは嫌いなの」

「…来るの?安全は保障できないわよ」

「面白そうじゃない!好奇心は探求する事によって輝きを増すのよッ。ほらほら早く、あまり騒いでると見つかっちゃう!」


折角テロリストの情報を聞き出すことに成功しようとしたのに…オリヴァーの伸びた姿を見てため息を落とす。

シオンは本当に絶妙なタイミングで彼をノックダウンしてしまった。

もっと詳しい話を聞きたいのは山々だが…それはまた後日という事にする。

シオンの背を負いながら、テロリストへの報復を胸に誓い廊下を駆け抜けた。