「――ッ痛…離して!!」
素早く床に転がった銃を掴むと、私の手首を捻り上げる。
銃口をこめかみに突き付けられ、身動きできない私に向かって彼は怒鳴り続けた。
女の力で叶う筈も無く、痛みに顔を歪めながら苦痛に耐える。
何故縄を緩めたのか、何故彼を善人だと信じたのか、何故助けを求める様な事を言ったのか。
数分前の私に呪いの言葉をかけはするが、同時に彼への同情の念は消えない。
「私もッ…そのお優しい姫ィさまに会ってみたいのよ。何処に行ったら会える?」
「姫ィさまは滅多に顔を出さない。それにどうしてそんな事を聞く?」
「その…姫ィさまって人、私に偉く御立腹みたいだから。謝りに行こうと思ってね。生憎面識があった記憶は無いのだけれど…彼女には私の存在が深く根付いてるみたいだから」
「じゃあお前…姫ィさまが言ってた天才科学者の…」
男が慌てて私の手首を離し、私を気遣うように肩に触れてきた。
それを片手で軽くあしらいつつ、赤くなってしまった手首をさする。
あからさまに態度の変わった男の対応に、姫ィさまから私への格別な配慮が窺える。
しかし私の記憶では姫ィさまという人間への面識がなく、恨まれるほどの事をした覚えも無い。
彼を手中に入れ込むのは時間の問題だと理解し、少しアクションを与えるため携帯を取り出す。
「その姫ィさまに出会ったのはいつ?最近?」
「一年位前になる。その間、俺に仕事をくれた。妹も同じ時期に入院したんだ」
「一年…となると。私がパンドラのシステムをダウンさせる前じゃない。一体何が――ッ」
「それより前にも…他の奴らがいた。ずっとずっと憎んでるって、後…最近…。ノエルって言う奴も増えたな。確か…黒羊が…なんとかで、アリスに会わせてくれ―っていつも叫んでる。あいつ口が悪いんだよなぁ」
