「きっと治療する気なんてないわ。貴方の妹さん、今どこに?」
「姫ィさんのトコに…入院させてもらってる。でも…状態が良くないからって会わせてもらえないんだ。でも…これが終わったら俺、会わせてもらえる事になってる」
「…それで、貴方はどうするの。その誓約書、まったく無意味じゃない。ならこんな馬鹿げたテロリズムに加担する理由は無い筈よ。今すぐ軍に出頭して、現在の状況と主犯格についての情報を通達するべきだわ。そしたら妹さんも…保護してくれるはずよ」
「そしたら妹が救われない。ずっとずっと一緒に居たんだ、でも体に斑点が出来て、消えなくて!病院に入ることも出来なかったのにッ姫ィさまだけは妹を治療できるからって!!だから俺は悪魔に身を売ったんだ!!」
声を荒げるオリヴァーはこちらの身が震えてしまうほどの迫力で、弾の入っていない拳銃を構える。
しかし彼はそれに怯まず、逆に銃身を大きな手のひらで握り込み、床に叩きつけた。
今更私の“甘さ”に気づいても遅い事を思い知る。
彼は…テロリストに仕立て上げられた可哀そうな人だとしても…振り切ることが可能だった悪魔の誘いに自ら乗るほどの覚悟の上此処に居るのだ。
「健康的な血色、綺麗な髪、上等な服。親の勝手な都合で約束されていた人間としての権利を奪われた俺の気持ちの何が分かる!?誓約書に効力がない?そんなの知るか、姫ィさまの所で今、妹は病気と闘っている!!それが事実だ!!俺は否定しないぞ、お前みたいな正義感振りかざした糞餓鬼に一体何が分かるっていうんだよ!!」
「姫ィさまって誰よ!世の中にはねぇ、ボランティア気取って軍資金かき集める最低な屑もいるのよ!!貴方が選ばれて使役された理由も、ID不所持者だからよ!IDがないという事は、治療を受けた病院も特定できず、“その後”だって隠蔽は可能だから!!だから…簡単に切られる」
「どうして信じちゃいけないんだよ!!あの人は俺達に手を差し伸べてくれたんだ!IDが無いだけでどうして治療を受けられない?IDが無いだけでどうしてこうも格差がつくんだ!!俺は汚い事幾らだってする、それで妹が助かるなら…ッ俺はどうなったって構わないんだよ!!」
