独:Der Alte würfelt nicht.

――後部座席でローズのはしゃぐ声が聞こえる。

始めてみる町並みを楽しむように、時たま聞こえる感嘆の声が可愛らしかった。

レイはいつも通り手動で車を運転し、時折俺の様子を伺っているようだ。

俺は窓から手を出す勢いのローズを制し、シートにちゃんと座るように言う。


「まだ1日も経っていない、傷は浅いだろ。半端な愛着は今すぐ捨てろ」

「…約束したんだ。白兎を探すまでは家に居ていいって。だから、見つかるまでは――」

「白兎…か。まったく、次から次へと面倒事が増えて不愉快だよ」

「ローズは被害者だ。だから絶対に粗末に扱うなよ」


はいはい、と心のこもらない返事をして、シャーナス将軍はハンドルを切る。

普通ならば自動運転に切り替えてハンドルなど持たないのに、奴はいつも手動で動かす。

特に理由は聞いたことないが、きっと下らない理由なのだと思った。

ローズの乱れたリボンを結び直してやり、折れたスカートを綺麗に直してやる。


「どこに、連れて行くんだよ」

「お前が言うとおり記憶が抜け落ちている部分がある。一度精神科の方に連れて行って診断してもらう。あそこで何を見て、何を“した”のか」

「やめろよ…ッローズは被害者だ!!なのに…」

「はいはい、そうだったな。君の可愛いローズちゃんは被害者だ」


いつまでも食い下がる俺にレイが大きなため息を吐く声が聞こえた。

声を荒げた時、ローズがびくりと体を震わせて俺の顔を窺うように見る。

前髪をぐしゃぐしゃと掻き毟り、ローズの頭を出来るだけ優しく撫でた。

俺を安心させるように腕に抱きつき、顔を擦りつけて目をつぶるローズ。