独:Der Alte würfelt nicht.

 

 ――胸元にピンッと伸ばされた可愛らしい赤のリボン。

首元を隠す襟は、少女らしさを醸し出す繊細なレースがあしらわれていた。

スカートをふんわりとみせる、ギャザーたっぷりのピンクのスカート。

袖元のリボンを結び直して、服の下に入ったローズの髪を外に出す。

流れた髪を緩く結び直し、お揃いのリボンを編み込む。


「…動きにくいのです。ウィル、このピラピラは取れないのですか?」

「こういう服なんだ。…此処まで似合うなんて、俺も思ってなかったというか…」

「んー…汚してしまうのです。こんなに綺麗なお洋服を汚してしまうのですよ。ローズは…こんなに良くしてもらって…とても感謝しているのです。でも…」

「いいんだよ。好きなだけ汚せばいい。また新しいのを買ってやるよ」


ふんだんに使われたギャザーの所為で動きにくいのか、足をもぞもぞと動かしている。

今にでも脱ぎ出してしまいそうな勢いのローズを押しとどめて、湧き上がってくる行き場のない感情の余韻に浸っていれば。

カシャッと。

聞こえるはずも無いフラッシュ音の後、いるはずも無い人間が携帯を構えて笑いを押し殺している。


「オマワリサーン、ココとても危険な匂いスル男イマスヨ!スグ来てくださイ!」

「シャ、シャシャ…シャーナス将軍!!どうしてここに!!」

「ははは、思っても無かったよ。君にこんな耐え難い“嗜好”があったなんてな。大丈夫だ、まだ通報はしていない。自分で自首しなさい」

「しない、しないって!!俺はまだ犯罪に手を染めていない!!」


ローズは突然の訪問者に驚いたらしく俺の後ろに隠れ、様子を伺っている。

積み重なった段ボールを隠すように立ち、乾いた笑いで場を取り持つ。

腹の底から俺を嘲り笑うシャーナス将軍に、今度こそ本当に泣きそうになった。

それが数分間続き、やっと飽きてきたらしく、改めて本日の訪問理由を言った。