――だが、数年後パンドラボックスが安定した運行を見せていた時に事件は起こった。
研究チームの一人が、構築されたパンドラボックスを使用しパンドラのシステムへの不正アクセスを図った。
その結果の、難攻不落の要塞だったパンドラの一部の機能が停止する結果になったのだ。
パンドラの自己修復機能さえも誤作動を起こし、損害や復旧を含め、多大な被害が巻き起こった。
その後、クラッキングの被害を受けた管理者の一人が、事の責任を負い自殺を試みたのだ。
私のいた研究機関を支援していたクライアントは、その数週間後支援を打ち切った。
「他人の膿を君が引き受けることになっただけだ。気に病む事も無いというのに」
「でも。悪用される事を懸念して打開策を打たなかった私も同罪。…根源を作ったのは私だわ。それに真実なんて…貴方が知っていればいいもの」
「私が知っているだけでいいのか?…随分と可愛いことが言える様になったじゃないか」
「…ほんと?」
ティーカップで顔を隠しながら、上目遣いでレイを見上げてみる。
彼は肩を竦め、テーブルに飲んでいたティーカップを置いて肘を突く。
細められた紅茶色の瞳がじっと私を見つめ、居心地の悪さにティーカップを音を立てて置いた。
顔が赤くなる前に、気丈な表情を作って彼へと向きなおす。
「そろそろ、具体的な話し合いをしましょう。貴方が私に何を求めるのか教えて下さる?」
「そうだな。とりあえず1年間は病気、怪我も無く健康的に生きてくれること…だな。対人関係にも気をつけること」
「………はぁ?」
「今日を境にパンドラボックスを支援していた“マーク”と呼ばれる四大名家の人間が君に接触してくるだろう。その際、相手の動向を伺い私に随時報告してほしい」
