「――こらッ暴れるなっ!引っ掻くなぁあ、こ、ッのッ!!噛み付くなッッ!」

「嫌なのです、嫌なのです、嫌なのです!!水は嫌いなのですシャンプーは目にしみるのですッ嫌ぁあっ…!!う、…ふえぇええっ…うう、うぬあーッ!!」

「痛い、痛いッ!爪を立てるな!!カーテンにしがみ付くな!!こら、あんまり暴れると危ないぞ!?」

「うえぇッ~泡が目に入ったのですッ痛いのです!ううぅ、ううっ!!ふええっうなぁああッ!!嫌あーっ!!」


ジタバタと暴れる少女をバスタブに押しつけ、水量を最大にしたシャワーを容赦なく髪に当てる。

嫌だ、というように所構わず暴れる少女は眠りについていた時とは別人だった。

引掻き、蹴られ、噛みつかれる。

こっちも自棄になって少女の髪にシャンプーをぶちまけ、両手でゴシゴシと洗っていた。

髪質が柔らかく、洗っていて心地がよかったのは…本当に始めだけだった。


「動くなッ、…ほら、いい子だから!痛い、ッ痛い痛いッ!うぎゃああッ!!」

「う、ッ~~!う、あうっ、ぬぅっ!うぅうッ!!」

「ほら、もう終わるもう終わる!終わるって言ってるだろ!?噛むなッ俺の指はウィンナーじゃねぇえッ!!」

「ッうえっ、ぺっぺっ!泡が口に入って気持ち悪いのですっ!ぬうっ止めてくださいなのですぅ~~ッ!!」


髪だけを濡らそうとしていたのに、暴れた所為で乾いた服までズブ濡れだった。

頭を左右に振っては抵抗を見せ、その遠心力に任せて泡が所構わず飛び散る。

少女を押さえつけ、泡を流し、トリートメントを髪に塗りたくってまたシャワーで流す。

壁に掛けてあるタオルを掴み、長い髪の水気を乱暴に吸い取っていく。

ドライヤーを取ろうと棚に手を伸ばせば、その隙を狙って俺の腕からスルリと小さい体が逃げ出した。