――精密検査と処置が始まって約1時間が過ぎた。
その間シャーナス将軍は、軍に戻るわけでもなく誰かと連絡を取り続けていた。
携帯で何度も発信を繰り返していたが、その甲斐虚しく結局繋がらずにうなだれている。
声をかけられる状態ではなく、常にイライラし続けて、繋がりもしないのにまた電話をかけていた。
「そこまで連絡をつけたいのなら、直接会いに行けばいいんじゃないか?ここは俺が残るから別に先に帰っても…」
「…そうはいかない。一昨日からずっと高校を休学している上に、マンションは蛻の殻だ。電話も繋がらない、IDも検索できない。この世から存在を消し去る勢いで雲隠れしているんだ」
「高校生?何だ、未来の奥さまの事かと思ってヒヤヒヤしたよ。妹がいたのか」
「未来のフィアンセだよ。向こうにも気がある。早ければ今年中に式を上げるつもりだ」
――…妊娠させたのか、そうなのか?いや…そんなヘマはしないと思うが…。
冗談言う顔ではなく、下手に茶化して返すと後でえらい事になりそうだった。
冷静な頭でもう一度考え直し、不純な交際の果ての選択ではない事を仮定する。
きっと今後のシャーナス家の発展の為、自分にとって都合のいい相手が現れたのだろう。
だが、形だけの政略結婚ならばここまで必死になるだろうか。
実は相手の家柄の方が優秀で、シャーナス家に対して権力を行使できる立場にあるのだろうと考えてみる。
「…家の為だとは言え、ご機嫌取りも大変だな。疲れるだろ、そういうのって。俺も兄さんたちから零れた子が泣きついてきて困るんだよな」
「さすがストークス家の跡継ぎ候補。人の齧った太ももが好みとは、大層なご趣味とをお持ちだ。そんなハイエナ達と彼女を同等に扱った事、忘れず覚えておこう」
「お、いッ!誰もそんなこと言ってないだろ!?俺の事を言うのはいいが、ストークス家を侮辱する事は断じて許さな――」
「嗚呼、ストークス家の事を悪く言ったように聞こえたなら謝ろう。だが、お前には謝罪しない。彼女を侮辱して一瞬でも蔑んだ事を恥じて欲しい」
