急ですが、帰国します。


こう一言書かれた絵葉書が先生の家に送られてきた。

差出人は

高瀬 瑠菜



しかも教授は同行せず、一人でだという。

「葵と瑠菜はイタリアで友達になったんだってな」

「はい・・・」

国語準備室であたしにはがきを見せながら、先生は言う。
家に通ううちにいつの間にか名前を呼び捨てにされるようになった。

普通だったらドキドキするのかもしれないけど、
あたしは普通じゃないみたいだ。


先生になんて呼ばれようと
そんなことはどうでもいい。


もう、あたしは誰が好きで
何がしたいのかわからなくなってた。



「そういえば・・・・また休み明けのテスト学年トップだったみたいだな」
「・・・はい」
「葵はいつ勉強してるんだろうって弥が不思議がってる」


先生が笑いながら言う。

あたしの知らない親子の会話が
二人にはあるんだろうな。


「先生。瑠菜はいつ帰ってくるのかな?」
「わからん。そして、どんなつもりで帰ってくるのかもわからない」

先生の表情が曇った。

先生はわたるが心配なんだね。

先生の宝物のわたるは
あたしにとっても宝物。


大丈夫。
あたしが守ってあげる。