オフの日。
のぞみさんがあたしを
ローマに住む大学教授の日本人の家に誘ってくれた。

今回のバイトはこの教授の研究の一環らしいが、
この教授は昨日までスペインのミハスで休暇を過ごしてたらしい。

「高瀬先生っていうんだけどね、すごく素敵な人なの。
考古学をストーリーだてて研究するの。」

「へぇ。」

あたしには石ころを筆で撫でるあの作業にどうストーリーをつけるのか。
全く理解不能だった。


とりあえずバスでその高瀬という教授の家に向かう。


郊外の閑静な住宅街にその教授の家はあった。
庭にはイタリアには不釣り合いなトヨタ車が止まってる。

「やぁねえ。葵ちゃん。最近は日本車の方が人気なのよー」

のぞみさんはそういった。
あたしはパパのアルファロメオを思いだし、
なんだか矛盾を感じる。


高瀬邸から不意にピアノが聞こえてきた。

「きっと娘さんのピアノだよ!ステキ!愛の夢だわぁ」

のぞみさんはよっぽど高瀬教授がすきなんだろう。

見るもの全てを誉める。

でも確かにこのピアノはすごいかも。

あたしは幼稚園でやめちゃったクチだけど、
音大生の従姉妹のピアノより上手に聞こえる。