マンションにつくと、
わたるはエントランスの前で待っていた。


「おそかったじゃん・・・」


濃紺に黄色のラインの入ったジャージ。
それに、おそろいの色のかばん。

かばんにはOHMIと名前が入っていた。

いつも会うわたるは学ランだったからちょっと新鮮だった。



「わたる・・・」

「・・・あおい。なんで父さんと・・・」

ああ・・・

わたるって、すごくまっすぐなヤツなんだって。


いまさら気づいた。

「なんでって・・・わたるの試合見たことなかったし・・・」

「見たいなら、俺に言えばいいじゃん。」
「だって、わたるバスケの話なんてあたしとほとんどしないでしょ?」
「・・・だからって、父さんと来るなんて・・・」



あたしはちょっと腹が立った。
わたるとは
部活が終わった後、モスに行ったり
あたしの家で会ったりする関係。

そのときの話なんて
ほとんどが
学校の勉強の話や
ジャズのはなし。

「わたるだって、あたしにバスケの話しないじゃん。」
「それはなぁ、興味ないと思って・・・」

あたしはうすうす気づいていた。
わたるはあたしが興味のない可能性のあるものを
遠ざけていた。

あたしに
あわせて、あわせてるの。


でも、あたし
わかるんだ。



むかしのあたしに似てる。


あたしも、昔、

パパにそうしていたの。



好かれたくて
好かれたくて

そばにいて欲しくて

愛されたくて・・・

男女の仲と、親子関係って違うかもしれないけど・・・
あたしは、わたるが昔のあたしと同じ気持ちじゃないかってそう思ったの。