わたるはあたしのカレシになった。
正確に言うと「なったみたい」

友達のミキが
「あたし、聞いたんだけどあおいって隣のわたるくんと付き合ってるってほんと?」

なんて、
教室で大きい声で言ってしまったものだから
ウワサはあっという間に広がった。

そして、わたるが自覚していたとおり
わたるは有名人だった。

「ほんとに、わたるって有名だったんだねぇ」
「もお、あおいってそういうところニブイんだから」

ミキ曰く、
わたるはバスケ部のエースであのルックス。
それに、ウチの高校では人気の近江先生の息子ということもあり、
余計に有名なんだとか。

「もお、あおいったらどうやってわたるくんと知り合ったの?うらやましすぎ!」

ミキはそう言うけど・・・・

わたる。

あたし、わたるがバスケしてるとこ一回も見たことないし、
わたるのことなにもしらない。

「あたし・・・、わたるのこと何も知らないんだよねぇ・・・」
あたしのつぶやきに
ミキは驚いた顔をした。
「知らないで付き合ったの??」
「・・・うん。付き合ってから知ればいいと思ったの。」
「ふーん。で、知ってみて、どお?」
「・・・やさしい。それに恐ろしいほど賢い。あたしの頭の内を見抜いてるみたい。」
「へー。うちの学校の学年トップのあおいの頭の内を見抜くなんてたいしたもんねぇ。」

わたる・・・
あたし、
初めてもっとわたるを知りたいと思った。