ホテルをでて、外の風にあたると
とても心地よくて。


今まで、
サユミさんに会うことをくよくよ考えていたのがばかみたいだった。


先生は
教えてくれた。


自ずと答えは見えてくるって。

パパの気持ちも先生のいう通りだったし、

そんな都合のいい話通らないって
パパもあたしもわかってた。



あたしは、
タクシーに乗り込もうとした。

その時。

「あおい!」


不意に後ろから声がした。


「…わたる」





わたるは何もいわず
あたしと一緒にタクシーに乗り込んだ。


「ちょっと、わたる。この車、あたしんちに行くんだよ?」
「そら、そうだな。」
「部活帰り?」
「うん。」



「…わたる。あたしが泣いたりしてないから面食らってんでしょ?」



図星。
顔に書いてる。


わたる、
心配して来てくれたんだ。



優しいヤツ。




あたし
不意に笑いが込み上げてきた。




「なーに笑ってんだよ。」
「別に!」


「俺はなぁ、お前が一人で出て来たから…
新しい母さんとケンカしたと思ってなぁ…」

「…新しい母さんなんて。ムリな話。
あたしはもう、パパに頼って一人で生きていくの!」


「頼って一人ってヘンなの…」




わたるって
あったかい…


先生の息子なだけあるなぁ。
それに、
よく見ると…


ほんと
ハンサム。



あたしはじっとわたるの顔をみた。

肌もキレイだし、

鼻筋も通ってる。

目も切れ長で、
睫毛も重たそうなくらいも長い。


女ってゲンキンなもんね。
あんなにさっきまで先生を思ってたのに

わたるに急に興味を持ってる。

「…わたる、部活って何やってるの?」

「え?しらねぇの?バスケだよ。」
「…しらないよ。」



「お客さんたち、着いたよ。」


あたしとわたるは、
車を降りた。


「わたる、こっから家までどうやってかえ…」

あたしの言葉をかき消すように、
わたるは大きい声で言う。

「あおいは…俺に興味ねぇのかよ。」