家に帰りたくないと言ったあたしを
先生は泊めてくれると言ってくれた。。


近江先生の家は
わたると先生の二人暮らし。


小綺麗な2LDKマンションにすんでいる。


居間には男らしく、余計な物はない。



さっき、
わたるは妹が自殺したとかなんとか言ってたけど、仏壇らしきものは何もない。


なんだか冗談にしてはかなり悪趣味だけど、
冗談だったんだろう。



嫌なヤツ。


その嫌なヤツは
あたしのためにジャージとTシャツを持ってきてくれた。

ぶかぶかで
動きづらいけれど。

けれど、
いい匂いがする。


安心する。人の匂い。

着替えて、
ソファーでくつろいでいると、
先生が言った。
「お父さんに連絡しておきなさい。」

「え、でも…別にすんでいるいるし。」
「きっと、田口のことを気にしているよ。」



「はい」



あたしは気が進まないまでも先生の言うことをきくことにした。


「パパ?」
『葵。ママの意識が回復したよ。パパとは話してくれないけどな。』
「そう。」
『今夜はもう少ししたら、葵のところに帰ろうかと思ってるんだが…』
「…ううん。学校の先生が泊まりに来いって言ってくれた。だから、先生んちにいるの。」
『そっか。電話代わってくれるか?』


「うん」



あたしはケータイを先生に渡した。


先生は自分の部屋にケータイを持って行って話しはじめた。





あたしは
そのままソファーに体を預けた。





吸い込まれていく。




手の届くところに先生がいる安心感。



うとうとと眠りかけた頃


あたしは唇に何かを感じた…

「ん…」


何だろう。
柔らかく、
心地よい感触。