「ママ、パパと今日離婚するから。」


あたしの17才の誕生日の前の日のことだった。


ふたりは、もう三年も別居している。
あたしも16才。

ふたりがかくしてもわかる。

パパには別な女がいる。



でも離婚はあたしが18才になるのを待つ約束だった。


「なんで…急に?」

あたしが聞くと
ママは悲しそうな顔をして、
「むこうの女に子供ができたのよ」
そう言う。

「そう。」


あたしはそれだけ言って、
それからママの手をだまって握った。


震えてた。

上からボタポタと涙が落ちてきた。


でもあたしは気付かないフリをした。

その涙は
パパに女ができたときも、その女と住むためにこの家をでていったときも

見せなかった
涙。


あたし、つまり子供という
最大の武器を持っていたママは
女に対してかなりのアドバンテージがあると
自信があったに違いない。

でも、
女は同じ武器を手に入れた。

そして
互角になったママと女。
パパは女を選んだ。


完全な敗北を悟った涙だった。


でも、
あたし思うんだ。

敗北はパパが家を出た日に決まってた。

あたしが18になるのを待つ必要もなかったし、
相手に子供ができるのを待つ必要もなかった。


ママが何を考え、
パパを引き止めたのか。

その時、
あたしには全く理解できなかった。



でも、
それはあたしが恋も愛もなにもしらない子供だったから。



今ならわかる。


万にひとつの望みにも賭けたいママの愛も

そんなママの気持ちを尊重したパパの優しさも…