魔性の小悪魔だなんて言うけど、美琥の方がよっぽどそうだと思う。

仕事でもナチュラルメイクの私は、メイク落としをするなんてこともなく、帰る準備を着々と進める。

私の隣では、とっくに準備を終えた美琥が、カバンをガサガサと漁っていた。



「あ、あった!」



そして、一枚の紙切れを取り出した。



「なに?その紙」

「あはっ。ただの紙切れじゃないんだな、これが」



自慢げに、得意げに、楽しげに、嬉しそうに紙を私に見せながら、ふふっと笑った。



「これね、〔オリオン〕の優待チケットなの」



『オリオン』

大人気の高級ホストクラブだ。



「へぇ。よかったね。いってらっしゃい」



一切興味ナシ。

バッサリ切り捨てると、美琥は焦って私の腕をつかんできた。



「・・・なに」

「一緒に行ってほしいの!お願い!」

「なんで」

「だって・・・だって、2枚あるし、美咲と行きたいし・・・お願い」



じぃっと見つめられた。

・・・困ったな。

美琥に捨てられた子犬のような瞳で見つめられると、イヤといえなくなる。

もちろん、美琥は確信犯に違いないけど。



「お願いっ・・・」

「・・・わかった」



あぁ・・・言ってしまった。

また、了承してしまった・・・

美琥はキラキラと目を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。