――感謝したなんて思った私がバカだった。












あの後から千尋くんの破廉恥ワールドに突入し、あまりの過激さに意識を飛ばしたくなった。




顔なんてゆでダコ状態だし、またそれを見てからかってくるし。








はあ、なんか疲れた…。






ぐったりした状態で千尋くんの腕の中で項垂れていれば、いつの間にか1つのドアの前に来ていた。




重い瞼を開け、ふと視線を上げれば―――









「第2、音楽室…?」




どうやら千尋くんの攻撃を喰らっている間に、第1ではなく第2音楽室と書かれたプレートがある部屋の前に立っていた。





千尋くんはよっこいしょ、と言って足でドアを開けた。ドアノブは開いてたみたいで、ほんの少しの隙間に千尋くんの長い足を滑り込ませば、余裕に開いた。




千尋くんはそのまま私を抱えたままふら〜っと入っていく―――






ちょっ、待ちたまえっ!




気にせず千尋くんは足を踏み入れていく。










案の定――…








「り、リコちゃん…?」







ほら、みんな目見開いて驚いている。



もう恥ずかしいったらありゃしない!






今すぐここから出ていきたい…。穴があれば全身入れてもう2度と出たくない。







「どうしたんだ?」




慎一郎さんはいまいちこの状況を理解していなくて、困った顔をしながらも優しく頭を撫でてくれた。






「このオジョーちゃん足捻ったみてーなのよ、もう困ったちゃんじゃねーか」




千尋くんが簡潔的にスマートにまとめて私の代わりに説明してくれた。





「え、そうなのか?とりあえずソファーに座って、手当てするから」





私は千尋くんにソファーまで連れてってもらい、慎一郎さんが救急箱を持ってきて慣れた手つきで手当をしてもらった。



しかし、私が座る前にソファーには日和くんがお昼寝タイムをしていて、わざわざ退いてもらうのも申し訳ないと思い、いいよと断ったのだが…。





「座れ」




と、いきなりムクッと起き上がった日和くんが私に気づき黒い笑みを浮かべ言い放った。








その笑みは魔王だった。