千尋くんが校舎に向かっていきなり歩き出すから私は首に腕を回してバランスをとる。



千尋くんは細いくせに意外と力持ちだし、強い。だって、私のことを軽々と持ってる。絶対重いはずなのに…。







「千尋くん」



「ん〜?」



「…なんでもない」






それに会ったときから思ってたけど、千尋くんは顔は笑ってても目だけは笑ってない。どこか冷めきっていて、何でも見透かしてるような目をしている。今でもだ。














――わかってる。




本当は私がここに居ること、あの不良軍団と関わることに賛成ではないということぐらい。




そこまで気づかないほどバカではない。これでも白鳥家のご令嬢だ。相手の目を見ればだいたい察しがつく。




確かに私が千尋くんを投げ飛ばして、何らかのヤバいことが起きてしまった。だから私をしばらく南校に通わせると考えた。でもそれを言ったのはおそらく千尋くんではなく、慎一郎さんであろう。




多分だけどね。



あと南校は最強軍団、いや不良軍団だからきっとこれから何かと危険な目にもあうんだろうなあ。







色々気になって考え事をしていると私の気をむかせようとしたのか、千尋くんが口笛を吹いた。






「リーコちゃん、オメーはもう勘づいてると思うけどよ〜。俺らはねいい人じゃなくて悪人なの、わかるー?」



「うん」



「…本当にわかってんのかあ?まあ、だから俺らと関わると危険な目ににあうってこともこれからあり得るんだよ」



「千尋く――」



「いいか、そこんとこよく覚えとけよ。これは忠告だ」






千尋くんは自分だけ言いたいことだけ言って後はもう何も言葉を発しなかった。



私も言い返したかったけど強制的にこの話はもう終わりらしい。