嫌な感じはするけど、入ってみたい。そんな好奇心にかられた。


意を決して一歩、線の向こう側に踏み入れようとしたその瞬間――――誰かに腕をつかまれた。



へ?






「はい、お嬢さん。ストーップ」



声がする方に振り返ると、私は黒髪の男性に止められていた。



誰だ、こいつ?



男をよく見ると、黒髪に軽いパーマがかかっていて、瞳は少し潤っていて色っぽい雰囲気をバンバン出している。目は二重で少し切れ長。いわゆるイケメンというやつだな。


歳は、同じ位に見える。



っていうかフェロモンですぎじゃね?



私より色気があるってどーゆーことー!!



悲しくなって、ひとりいきなりテンションダウン。



とりあえず、その事は置いといて。男に視線を向ける。


だって、止められる理由がわかんない。




「なに?向こう側はなんかあるわけ?」



そうだ、訳がわからない。
私は、いま未知の世界にいる。



「とにかくダ〜メ。知らない方がいいこともあるのよ、お嬢さん。」



「いいじゃん別に。私の勝手でしょ。」




やんわり反対される。って、教えてくんないし。



反抗して手を振りほどこうとする……が、まったく抜けれない。



こいつ、華奢なくせに力が強い。




どうしようか。



向こう側に興味はあるが、こいつが居るからいけないし……。




しゃーない…

諦めるか。


どうしてか気になるけど、諦めることにした。




「わかった。……だから手、離して。」



男は、諦めた私に安堵の息をはき、するりと手を離し私をジッと観察する。



な、なんだよ…


おいおい兄ちゃ〜ん。観察料いただくぜ?


私に穴があくだろーが。



っていうか、あんた握力半端なさすぎだろ。私だから良かったけど、他の女子だったら痛くて泣いてたぞ。


ぐちぐち男に文句を並べて、もと来た道に戻ろうとした。



が、また男に腕をつかまれた。今度は優しく。