「……天姫…
この世は醜いと思わないか?」


鬼の美しい瞳が空を見上げる。心底この世界を憎むように美しく歪んだ瞳…


「人は自然を壊し、弱き生命を貪り、自らが生き残る為に無様に生に縋る…
なぁ…姫よ…人は愚かだと思わないか?」


人が自然を壊す。
弱き生命を貪る。
生に縋る。


これは事実だ……
でも……


「たとえ…人が自然を壊し、弱き生命を貪り、生に縋る醜い生き物だったとして…」


刀を構え、油断を見せる事なく言葉を紡ぐ。


「人は過ちに気付き、何とかしようと一生懸命になれ
る存在だから…
ただ奪い、滅ぼし壊す事が最善だとは思わない」



あたしは信じたい…
今人間を守る事で何かが変わる事を……


「それを待っていては我らの生きる地は滅んでしまう…
壊れ行く世界を黙って見ていろというのか!?」


鬼は怒りの感情を現にあたしに斬りかかってくる。


「衰退が進んだこの世界を変えられるのは知恵と技術に秀でた人間しかいない。今更、人を全て滅ぼしたとしても…何も変わらない!!」


―ガキンッ

刀がぶつかり合う。