「…どうして……?」
はらはらと舞う白銀の髪が、まるで散り際の桜のように見える。
でも、その美しささえ目に入らぬほどにあたしは動揺していた。
髪が短くなった理由も、目の前で草助様が笑みを浮かべた理由も…
何一つ分からない。
「…美琴」
「…は…い………?」
優しげに名を呼ばれ、半ば無意識に返事をする。
「お前は…天宮美琴は、いまここで死んだ。死んだ者に私達は何も望めぬし、強制も出来ないだろう」
その言葉で草助様の真意を悟った。
草助様…………
涙が一滴、頬を伝った。
あたしを逃がそうとしてくれた。長という立場で、情さえも捨てざる終えない草助様が……
世界よりあたしを……
「今度こそ、天姫を救いたかったのだ、救えなかった…いや、見殺しにしたあの人への償いの為にも…」
虫のいい話だな…と、草助様は付け加える。
「お前の叔母にあたる、天宮艶乃という女性を私は愛していた…」
あたしの叔母……
母様のお母様。
艶乃…お祖母様……
「でも、背負う責任と彼女を天秤にかけたすえ、私は彼女を捨てたのだ…」
自嘲するかのように笑い、草助様は瞳を閉じた。
「艶乃の心は自らの身を捧げる事で、次第に追い詰められ……壊れた」
天姫はどんな時代でも、何かを捧げて生きてきた。
ただ犠牲になる為に生まれた。
だから、お祖母様の心が壊れてしまうのは、当たり前だ。
「そして、自ら命を絶ってしまった。お前と面立ちが良く似ておる。母親である静以上に…」
母様も、艶乃お祖母様も…
もうこの世界にはいない。"死ぬ"、というのは永遠の別れなんだ。
「せめて…彼女が愛した者達を、繋いだ命だけでも救いたかったのだ。すまない、もっと早くこうしていれば良かった…」
深々と頭を下げる草助様にあたしは慌てて駆け寄る。


