「あたし…記憶のほとんどが無くて…」
そんなあたしの言葉に、萩原君は心配そうな顔をした。
「何か…事故か何かで?」
「…それも記憶に無いの…」
どうして自分に記憶が無いのか…あたし自身が知らない。
「どうしてなのか…母様も誰も教えてくれない…。
今はまだ知らなくていいの一言しか言わない…」
馬鹿でも分かる…
あたしの身内が何かを隠している事くらい…
「…記憶喪失って…不意に記憶が戻ったりするんだよね?何かそういう兆候は無いの?」
兆候……か……
そういえば………
「最近、断片的な記憶は戻ってきた…かな。時々、声とか映像とかが見える時があるから…」
それから…溢れそうなほどに膨らんだ愛しさや耐えられないほどの悲しみ。
そんな想いも時々感じていた。これも記憶なんだろうか…
全てを知った時、今と何ら変わる事なく生きていけるのだろうか…
「…天宮さん…やっぱり顔色が悪いよ。今日は休んだ方が良い」
またぼーっとしていたのか、萩原君は心配そうにあたしの体を支えた。
「…ごめん……こんな状態
で学校に行くの…自分でも
おかしいし馬鹿だと思う。
けど……行かなきゃいけない気がするの。何か良くない事が起こるような…」
これは予感のような確信めいたものではないけれど…
嫌な予感がする……


