「早く!!
循環器内科の先生を呼んで!!」


院長先生の指示が飛ぶ中、俺は黙ってソファーに座りながら経過を見守ることしか出来なかった。


だけど…

しばらくして、先生に呼ばれた。


「大丈夫。
一時は危篤状態だったが、朱音ちゃんの心臓には問題ないよ。」


「朱音の心臓…には?」


ということは…お腹の子供に何か?


また流産させてしまうのか…?

それだけは避けたい。


もう二度と…朱音の悲しい顔は見たくない。


「……胎児も無事だよ。
きっと…お腹の中の子も生まれてきたいんだよ。
君と…朱音ちゃんのところに。」


「先生…」


「朱音ちゃんは頑張ったよ。彼女にエネルギーを与えているのも…お腹の中の子なんだろうな。」


それだけ言うと、先生は仮眠室に案内してくれた。


「……特別だ。
朱音ちゃんが心配だろうから、この仮眠室で寝ていいよ。」


「あ…ありがとうございます。」


「朱音ちゃんが目を覚ましたら、手元のボタンが鳴るからな。」


それだけ言うと、先生は穏やかな笑みを浮かべて階段を降りていった。


病院の仮眠室。


2段ベットが4床あった。

病院のスタッフが、交代で仮眠をとるのだろう。


夢を見た。


俺の祖母の家を、朱音と2人で訪ねている夢。


朱音の手の先には、俺たちの子供がいて、
祖母に可愛がられている…そんな内容だった。


そのとき。

消防車のサイレンのような音が、急に俺の鼓膜を揺らした。


朱音っ!!