家に行くと、リビングのソファーの下に倒れている朱音を発見した。


朱音は何か不都合なことがあるとすぐふてくされて寝るから、
今回もそうだろうと思った。
少なくとも、玄関から見た限りでは。


だけど、違ったんだ。


顔が真っ青で、脈拍がほとんどとれない。


「……朱音っ!?」


まあ、朱音の場合は末端冷え性で、血管が細いせいもあるのだが。


目についたのは、リビングのテーブルに置いてある多くの紙袋。
病院で処方されたときなどに用いられる袋だ。


その中には…大量の錠剤があった。


「院長さんっ!!
コレ…」


「………!!
…全く…私、何があってもこの睡眠薬と精神安定剤だけは多量に飲むなって言ったのにっ…
………。
とりあえず、今触診してみた段階では、お腹の子供に影響はないみたい。」


そう言った院長さんは、手早くドアを開け、押し入れからあるだけの毛布を引っ張りながら言う。


「院長さん…救急車をっ…」

そう言っているうちに、救急車の規則的なサイレンが間近に聞こえてきた。


「ふふ。
こんなこともあろうかと、私たちの後を追うかのように救急車を走らせておいたの。」


そう言いながらも、院長さんは素早く救急隊を部屋まで誘導していく。


「こっちよ。
急性薬物中毒の疑いあり。妊娠一ヶ月の妊婦よ。
とにかく、病院へ。
私も同乗するわ。」


朱音を担架に乗せるのを手伝う俺に向かって言った。

「早く。
貴方も乗りなさい。」


朱音が読んでいたマタニティー雑誌に書いてあった。
この時期の薬の服用は危険だと。


朱音…

無事……だよな?