ほぼ無意識に、目が覚めた。

気づけばもう夕方の16時。
枕元のクッキーをかじりながらふと思う。

和…さすがにまだ帰って来ないよね…


とか思った矢先、トントンとノックの音が聞こえた。


「ゆづ、大丈夫?
お粥作ったけど、食べられる?」


心配そうな顔の和。


「ありがとう。」


まだスーツ姿だった。


「ちゃんと食べておくから、和は早く着替えてきちゃいな?」


「ふふ。
ゆづがそう言うなら、お言葉に甘えて。
ちゃんと軽いものは食べてるみたいだし、無理して完食しなくても大丈夫だからね?」


和は私の枕元にちょこんと置いてあるクッキーに視線を向けてから、自室に向かった。


「お、完食出来たみたいだね。
…良かった。」


パーカーを着て現れた和。
なんかやけに似合っていて可愛い。
アルプスさんが、和に「パピー」ってあだ名をつけたワケ、分かる気がする。


「ホントに、ありがとね、和。」


「お礼言われるほどのことしてないって。
奥さんが体調悪いときに何もしないダンナさんなんていないでしょ。」


和のその言葉が可愛くて、和にキスしていた。


「…もう。
そんな可愛いことしないでよ。
……襲うよ?」


「ちょっ…和っ……///」


顔が真っ赤になって、身体中が熱くなっていくのが分かった。


「前も言ったでしょ?ゆづ。
僕は具合悪い人には手ぇ、出しませんよ。」


そういえば、そうだった。
早とちりしていた自分が恥ずかしくなって、窓の外に視線をやった。


「あ、雨…」


いつの間にか空が灰色になっていて、雨粒が屋根を叩く音がした。


慌てて部屋を出て行った和。


「ふう。
お粥作った後、洗濯物、取り込んでおいたんだった。だから、大丈夫ですよ?
ゆづ。」


そう言いながら、ネコみみが付いたパーカーのフードを被ったままの姿で、和は私のいる部屋に戻ってきた。