「祐希…大丈夫かな…」


現場に着くと、女の人が指揮をとっていた。


「何、ボケッとしてるのよ!!高沢。早く止血なさい!!コイツを生かしておかないと、天野 絵理を裁判にかける際に不利だわ。」


「来たようでございますね…
ただいま、処置を致しますので、お待ち下さいませね?奥様。」


そう言って、柳下 祐希を担架に乗せていく、高沢と呼ばれた男。


「あら、高沢、いたのね。 彼がいるなら大丈夫ね。
宝月家の専属医師だもの。」

腰に手を当てながら、自信満々に言う彩さん。
その仕草が、強気な彼女によく似合っている。


「ママも検事なのに医師免許まで持ってるしね。ママが指揮ってくれていたのはありがたかったわ。
…あら?」


ふいに、彼女が喋るのを止めた。


どこからか、パトカーの音が聞こえてきたのだ。


「やっと来たか。
遅いっつーの。
刑事のこのオレが至急、来るように言ったのに。
なぁ、姉さん?」


「麗眞。貴方までいたのね。
ホント、日本の警察は対応が遅いわ。」


後ろから、刑事をやっているのが信じがたいほどイケメンの男が。

どうやら、彩さんの弟らしい。

彩さんの母親もアイドルみたいにキレイでクールビューティーな感じだし。
美人家系なのか?
この家。


「あの…『どなたかドクターヘリの中に同乗なさいますか?
ただ今、柳下 祐希は輸血をしておりますゆえ、少々痛々しいでございますが…』
ということで、高沢から伝言を預かっておりますが…」


「行けば?
谷村さん。
好きなんでしょ?柳下さんのこと。
今行かないでどうするの?僕たちは、悠香がいるし、行けないから。」


そう言って、谷村さんの背中を押してやる。


「はい…」


小さく頷いた谷村さんは、ドクターヘリの方に駆け足で向かった。