「もうっ…
困るよ?
和まで体調崩したら…」


そう、小さな声で言うゆづと2人で、最上階にあるレストランに。

窓からは病院の外にある公園が一望できる。


「ねぇ和?
私たち…あんな風になれるのかな…」


公園で仲良く遊ぶ子供連れ夫婦を眺めながら、僕にしか聞こえないくらいの声で呟く悠月。


「大丈夫。
絶対大丈夫だよ。
何があっても、浮気だの、離婚だの、しないから。」

「それは気にしてないから大丈夫!!」


そんなコト…そんな可愛い顔して言われたら…仕事に集中出来ないでしょ?

ホント…罪な奥さんだな。

「和、ホントにまともに食べてなかったのね。
普通のレストランによくある"ナントカ御膳"のボリュームに匹敵するくらい、食べてるわよ?」


「だって、バナナとヨーグルトしか食べてないもん。…寝坊してさ。」


「気を付けなよ?
私、知ってるんだから。
プロデューサーさんに何かあったら、自分の後任、和だって。」


え?

マジで?

知らなかったんだけど…


「まだ、分かんないよ。
後任にするかも
としか聞いてないし。」


「でも…ありがとう。」


食事を終えて、検査を終えた悠香に行ってきますを言ってから、職場に戻った。

無事に同僚の分も仕事を終えた。
帰宅したのは日付が変わった頃。


僕の携帯に、悠月から着信が入った。


「もしもし?
どした、ゆづ。」


『何でもないんだけど…和、また寂しがってるんじゃないかなって。』


"また"ってことは…気付いてたの?
僕が寂しくて眠れなかったこと…


「ありがとっ…悠月。
声聞けただけで…十分嬉しいよ。
ゆづも大変なのにさ。」


『あと2日。
あと2日で…私も悠香も退院出来るって。
大丈夫だよ、ウィーンでのときに比べれば、2日なんてたいしたことないんだし。』


強くなったよな…悠月は。
夜も遅いから早く寝ろって言って、電話を切った。